カテゴリー別アーカイブ: fittingの話

Voigtもどき

20年程前までVoigtという肩当てがありました。

今は生産中止で販売しているところもほぼないのでご存じない方も多いと思います。

僕もしっかり実物は見たことがありません。Voigtを使っているお客さんがたまにいらっしゃるのでチラ見して知っている程度です。

このVoigtは今の肩当ての様にネジ式で高さが調節できるように出来ていないのでlow,normal,hightと3タイプの高さがあったそうですが実際使う人によって高さが違うので微妙な修正が必要で結構面倒くさい代物っだったそうです。

また、固定の仕方もゴムで引っ掛けるタイプのもので落ちやすかったのでしょうか人気がなく廃盤になってしまいました。

でも音の響き方は良かったようで今でも根強いファンがいらっしゃいます。

そして、お客様からの一声です。「あれ良いんだけど、もうどこにも売ってないから作って!」

素材も木でできていて大体の形しか知らなかったのですが楽器を作るの時には使う材料で作ってみました。

IMG_0092白い色の方は第1号で楽器に当ててみたら大きかったのと高さが最初から少し低めに作ってしまったので後から高さを出すために継ぎ足しをしていて、第2号のピンクの方は大きさを1号から修正して少し小さめにして、高さも最初から高めに肩に当たる部分はお客さんからのオーダーでド派手なピンクにしてとのことでこの色になっています。まだまだ実験段階で改良点は沢山あると思いますが、最近の肩当のようにカーブがきつくなく楽器を固定してしまうことがなく音も窮屈にならないと思います。が、肩当の良し悪しは個人差があるので一概にこれがいいですとは言いにくいです。これでお客さんに合わせながら少しずつ改良していこうと思います。

バージョン1.0でした。

Fittingの話4-2

2部では二つのピンの違い、などをお話していこうと思います。

まずフェルナンブーコだけで作ってみたエンドピンと台座がこちらです。

フェルナンブーコピン

黒檀でできたものと同じ形ですがピンはフェルナンブーコの素材そのままの色ですので派手ですね、フェルナンブーコでも材質により色が赤っぽかったり茶色っぽいのもありますがピンに使用しているのは軽くて明るめのものを使用しています。

その理由は黒檀ピンとフェルナンブーコピンの違いと少し近いのですが、黒檀の材質は少し粘り気があり重くウェットな感じで金属ピンに比べると楽器の反応は格段に速いのですが感覚的に言うと少し音が潜る感じがします。

それに比べて明るい色のフェルナンブーコは粘り気が少なくカリッとした感じで黒檀ピンの様に潜る感じがありません。音の立ち上がりが黒檀のものとは比べ物にならないくらい早いです。ただ、色の暗いフェルナンブーコは材質的に黒檀に近いような感じがあり重さもあるので音色や音の立ち上がりが少し控えめです。

やはり弓に使われている材料だけあって強度、反応、倍音の成分素晴らしいです。

ですが、この差を知ると黒檀ピンすら楽器には負担があり楽器の抵抗になっていたんだという事が分かります、余計なものが増えて楽器の荷物が増えると楽器は反応が遅くなり、倍音が減ってしまいます。が、倍音や楽器の反応が増えれば増えるほど弾いているときの手ごたえや、自分の近くで聞こえる音は小さくなり自分の弾いてる音は本当に鳴ってるのか心配になるほどです、逆に言えば余計なものを増やして荷物を増やすと手ごたえや自分の近くで引いているときの感触は増えていきます。 これは傍で鳴るだけで遠くには音は飛んでいきません。

つまり、バロックの時代にピンがなかった状態から今の金属ピンができて来た流れの中でボディに余計な荷物が増えてきてどんどんチェロという楽器本来の音からは離れて来ているという事です。

これまで色んなfittingの話をしてきましたがfittingは楽器にとっては余計なもので、できれば無いほうが楽器本来の音が出ますが、じゃあ、無しで!!みたいに簡単な話でも無いので付けるなら最小の負担で最大に近いだけの結果を出せたら良いよねという事で未だに完成ではないのですが付けているものです。という事もお話してきました。

ここで紹介させてもらったアジャスターや顎当て、エンドピンを付ければ音が良くなるからぜひ付けてみて下さいね!という事ではないですというのもずっと言って来ています、いかに楽器に負担をかけず、に楽器のバランスを整えたまま出すかがfittingのポイントではないでしょうか?

ちょうど、今週末に毎年科学技術館で開催されている弦楽器フェアがありますが、そこで当工房のチェロが試奏楽器として出ています。そのチェロにはフェルナンブーコピンがついていますが、付け替えて弾けるように黒檀ピンや金属ピンも一緒に用意してありますので同じ楽器の状態で金属ピン、黒檀ピン、フェルナンブーコピンの差を実感していただけると思いますので興味のある方はぜひ試奏しに行かれてはいかがでしょうか、その際は杉藤楽弓社のブースにあるチェロを弾いてみて下さい。

そこで少しでも何か思うことがあり自分の楽器の音が本来のものなのか歪から出ているものなのか、自分の楽器らしい音って何だろうと感じてもらえることができれば幸いです。

というわけで、fittingの話はこれで終わります。これで完成ではないしまだまだ余計な部分もあると思いますが一つのパーツとしてそればかりに固執してしまうと楽器の本質から離れて行ってしまうと思います、そうすると何度も言うように「これ付けてみたら音良くなりますよ!」になってしまうので、まずは今の楽器の現状を把握して、その楽器のバランスを整えて、そこからfittingどうしようかと話をしていきたいものですね。fittingに対する見方が少しでも変わってくれたら嬉しいです。

そのためには楽器をちゃんとしたバランスに整えなければならないのですが、楽器は1本1本個性が違うのでその1本1本に合わせたセッティングにしなければならいのですが、それがまた難しくて…まだまだ修行が足りないなぁ…とめげる毎日です。ちゃんと楽器と向き合って一つ一つ大事に仕事に励むように精進します、未熟者ながらこんな大層な話を書き綴ってきましたが最後まで読んでいただきとても嬉しいです。 長いことお付き合いいただきましてありがとうございます。

ではまた何かの話をするかも知れませんし、全然関係ない事を突然書くかもしれませんがそれはその時で(^^)

よろしければお付き合いください!ではではm(__)m

Fittingの話4-1

今回のfittingはcelloのエンドピンのお話をしていこうと思います。長くなりそうですので2部制で行きたいと思います。

celloのエンドピンのシャフト(棒の部分)といえば金属のもので太さが8ミリのものか、10ミリのパイプ状のものが一般的で、金属の材質もスチールやアルミ、タングステンなどでできているものが今の主流です。

今の主流はひとまず置いて、まずエンドピンの歴史をお話していこうと思います、想像を交えつつですので事実かどうかは分かりませんが(^^;話の都合上、本体に付いている部分を台座、シャフトをピンと呼んでいくことにします。

今のモダンのチェロと違いバロックチェロには台座のみでピンがありません、バロックチェロは楽器を足で挟んで固定して弾くのでviolin、violaと同じ形状のテールピースを固定するための台座が付いているだけでした。

それから楽器をより楽に固定し演奏しやすくするために台座に直接刺すピンが出来ました。このピンは台座にテーパーになっている穴が空いていて、そこに黒檀で出来たピンを指して使うものでした。これによって足で挟んで固定していた楽器が自由になり演奏し易くなりました。ただしこのピンは長さの調整が出来ないのとピン単体で持ち運ばなければなりませんでした。ここは少し不便ですね、恐らくいろんな長さのピンがあり、自分に合う長さのピンを持っていたのかもしれません。

それから台座に穴を開けてピンを通し長さの調整が可能になる様に改良されました、この時はまだピンは黒檀で、太さも今のものよりも太いものでした。これは強度的に太くないと曲がったり楽器を支えきれないためだと思います。そしてさらに改良されピンが金属製になり、細くなり、様々なピンが作られる様になりました。

ここで一つ思う事はピンは元々無かったもので最初に出てき時の概念は楽器の一部で付属品と言う考えでは無かったのではないかと言う事。それが時代と共に別の独立したパーツとなってしまったのではないかということです。最初に出来たであろうピンは金属ではなく木材で、元々エンドピンと言うものは木材で出来ていた、楽器の一部。単純に台座が伸びたものと考えると今のエンドピンの状態は楽器との折り合いが悪そうです。金属は楽器にとっては異物ですし木材と比べるとかなり重いものです。

そこでまずピンを黒檀にしてみることから始まりました、太さは強度の関係で昔あった黒檀ピンと同じ太さで、台座は既製のものを改造して作り実際に製作してみました。

昔ながらの黒檀ピンですが、このピンと金属ピンの差が歴然で音の広がりや倍音の成分まで全然別もので、改めて金属ピンと言うのは楽器の振動を妨げていて楽器にとっては余分なものだと思いました、特に材質の金属が重くなればなるほど音の響きは無くなり反応も落ちていくことも分かりました。つまりピンは無しで弾いてくださいというのは流石に無理なので材質を軽くして反応の早い材質であれば楽器にかかる負担も少なくなり、楽器の反応も早くなって倍音も増えて来るのではないかと言う考えになりました。

ピンを留めるネジの材質一つで音が変わってしまったのにはビックリしました(^_^;)

最初に作った黒檀ピンはこんなものです。台座も改造品ではなく1から作ってネジも真の部分以外は黒檀で作っています、先端は床に刺さる部分なので金属ですが黒い部分は黒檀で台座のネジの入るところも木だと強度が出ないので真鍮でできています。黒檀ピン

こんな感じです、これから楽器の反応や強度などを考えて弓の材料にも使うフェルナンブーコで同じものを作ってみました。二つのピンの違いなどは次でお話していこうと思いますのでひとまず1部は終わります。

 

Fittingの話2

アジャスターのお話をしていきたいと思います。

普段皆さんが目にするアジャスターはHillタイプやwittnerのL型のものなどありますがどれもテールピースに直接付いているものがほとんどです。

松本弦楽器で扱っているものは自作しているもので市販はされていません、まずは実物を見てください。

ajasuter1ajasuter3

これは1番線の駒とテールピースの間に引っかかるように付けているもので重さは1グラム位です。ただぶら下がっていて簡単に取り外せるものです。市販のL型の物やHillタイプのものは大体3.5g~5g位です。

このタイプのアジャスターはテールピース自体の重さを変えることがなくテールピースをフリーにできます、またHillタイプに見られる様に弦のかかる高さを変えてしまいE線の張力が増えてしまうこともありません。

このアジャスターを付ける最大の理由はそこにあって市販のアジャスターの何がいけないかというと、テールピースから出てくる弦のかかる角度を変えてしまいテールピースがねじれてしまう、テールピースの枕のカーブが崩れてE線だけ飛び出してしまう。それに加えてテールピースの片側に重さもかかるのでよりアンバランスになってしまいます。これらがクリアできていればL型の物でもHillタイプでもある程度のバランスは整えられるので良いのですが、重さの問題だけは無理です。楽器にとっては余計な重りが片側に乗っている状態ですので。

このアジャスターですら、ある時とない時では出る倍音に差が出るので出来ればアジャスターは付けない方が良いのですが付けるならこの程度が限度だと考えています。アジャスターが無くても意外とE線の調弦もできます、要は慣れですね。

よく、このアジャスターを付ければ音が変わるとか、響きが変わるとか耳にされると思いますが、重さやテールピースの角度が変わっていればバランスが変わるので音が変わるのは当たり前ですね。何故変わるのか、どんな要因でどう変化するのか分かったうえで変えるなら意味があると思いますが、とりあえず変えてみるのはあまりお勧めしません、もし交換してみようと考えている方がいたら今の状態をよく観察してみて交換したらどこがどう変化するのか調べた方が良いと思います。材料がチタンだから良いとかニッケルだからダメとかそう言った上辺の話ではなくてもっと根本の基本的な事だということを知ってほしいです。

当店で販売している楽器には初期オプションでこのアジャスターが付いていますがこのアジャスターを付ければ音が良い!!と言うことではなくて、付けないに越したことはないけれど、付けるならこれが今の所1番楽器に影響が少ないので付けているという感じです。これ以上に楽器に影響がなくて音のロスも少ない物があればもっと良いと思って色々試していますがなかなか良い感じにできません(^_^;)

ペグボックス内にアジャスターを仕込めることが出来れば楽器に与える影響が減るのでもっとアジャスター無しの音に近づくと思うのですが結局アジャスター無しが音も良いし、じゃあアジャスター無しで調弦することに慣れてしまうのが1番良いんじゃないか…とか、元も子もなくなってしまいますね。でもアジャスターはそんな物だと思います。自分でやってて言うのもどうかと思いますが、そこに拘って色々やってみてもあまり意味は無いと思います。でも‥やりますけどね(;一_一)だって、もっと良くなるかもしれないから‥

と、これが松本弦楽器なりのアジャスターへの考えです。これは以前のブログの記事の中の初心に還っての基本を踏まえた上でのことで楽器の状態によってはアジャスターを付けていた方が良い場合もあると思いますので全部が皆こうではないし、アクセサリー感覚で付ける人もいますので、それはそれで良いと思います。

以上がアジャスターのお話でした。次回はあご当てのお話をしようと思います。恐らくあまり見慣れないあご当てが登場しますのでお楽しみに!

ではでは次回m(__)m

 

 

 

Fittingの話 1

Fittingの話、最初はアジャスターについてお話ししていこうと思いますが、まず初めの大前提として付属のパーツに対する考え方をお話ししていきたいと思います。

松本弦楽器としての解釈なので世間のご意見などは多々あると思いますが、アジャスターや、肩当、顎あては楽器にとっては余計なもの本来は無くてもいいものであると思っています。

さすがにテールピースや、エンドピンは無くてもいいとは言えませんがエンドピンでもチェロの場合ピンの素材も大事になってくるとは思います。

ではなぜ余計だと思うかというと、楽器本体にとっては重さが掛かってその付属品があることによって音のなる運動の妨げになるから無いほうがいいと思うわけです、それにアジャスターの場合テールピースの片側だけに重さが掛かり、またアジャスターの形によってはテールピースの枕の傾きを壊してしまうためにバランスまで崩れてしまいます。

顎あてに関してもそうですが、これは顎あてのお話をする際に説明していこうと思います。

つまり、Fittingは楽器の運動エネルギーを損なわないように、妨げにならないようにしながら付けなければならない物、本来はなるべく無いほうがいいんだけども…と言う前提で取り付けています。

また楽器のバランスが整って来れば来るほどこの小さな重さやバランスの差が楽器の鳴り方に大きな影響を与えます。

ですので、うちで扱っているアジャスターを付ければ音が良くなりますよ〜とか、顎当てを変えてみたら音が良くなりますよ〜とか、そういう話ではないことをご理解していただきたいです。

そもそも楽器のセッティングを整えてから付属の話をするのが普通だと思いますし、土台がしっかりしていないのに上物をごちゃごちゃいじっても訳わからないと思います、これからするお話は楽器の状態を整えた上でのお話です。

ではアジャスターのことをお話ししようと思いますが、相変わらず前置きが長くなってしまったので、1度終わりますf^_^;

次回はちゃんとアジャスターのお話をしますm(_ _)m

Fittingの話

2015年のシリーズ、何にしようかと考えていましたが今回は楽器のフィッティングつまり俗に言うテールピースやペグ、あご当て、エンドピン、アジャスター等に関するお話をしようと思います。

この中ではこれらのパーツに対する考え方なんかを書いていこうと思います、またたぶん松本弦楽器だけでしか使わないであろうパーツも画像と一緒に載せていきたいと思います、もちろんその使用目的や何故そういう風になるのかも説明していきたいと思います。

相当マイナーなパーツもあるので初めてご覧になる方もいるかもしれませんがお付き合いください。

そんなシリーズ最初はアジャスターから行きたいと思います。

では次回から始まりますのでよろしくお願いします。