月別アーカイブ: 2013年10月

初心に還って

更新するのがだいぶご無沙汰してしまいました。バタバタしているうちにもう秋で来週には毎年恒例の弦楽器フェアが始まります。

僕がこの楽器業界に脚を踏み入れたのはちょうど10年前にバイオリン製作の専門学校に入学したのが始まりでした、気がつけばもう10年ですねぇ…あっという間でした。

親方に出会ったのは専門時代にリペアの講師として来て頂いていた方が親方の弟子で、授業の一番最初に午前中だけ親方も学校に来て下さりリペアとは、『楽器とはなんですか?』と質問したのが始まりでした。(実は僕はこの時いませんでしたが、後日教えてもらいました(;^ω^))、未だにあの時授業が午後からだからと言って寝ていた自分にパンチしてやりたいです。

『楽器とはなんですか?』

なんでしょうね、骨董品と思う方、芸術品と思う方、色々いると思いますが

楽器とは自分の運動エネルギーを音に変える変換器つまり単純に言えば道具ですね。

楽器屋はその道具がきちんといた状態で使えるように整備、修理する道具屋だと思います。

製作家は何か自分のことを芸術家であり、作る楽器が芸術作品を作っているつもりの方も数多くいると思いますが楽器は道具であり、製作家、修理屋は道具屋でしかないと思います。

楽器屋は演奏家と楽器の橋渡しをするつなぎ役で、そこには余計な小細工は必要ないと思います、演奏家は曲を弾くときにこんなフレーズをこういう感じで弾きたいとイメージしてそのイメージを音にします、そんな時に楽器はどういう状態であるのが正しいでしょうか?

フレーズや音程を外しても音が引っくり返りもしないどう引いても同じような音の出る楽器とフレーズを外したり音程が悪ければその様に音が出てボウイングが悪いと音がひっくり返る楽器、どちらが良いでしょうか?

前者は何をやっても同じ音なので良く弾こうが悪く弾こうが同じ音です、後者は失敗したら失敗した音ですが上手くツボに入った時の音の出は半端ないです。

つまり良い状態の楽器というのはツボ感があり、ツボにはまれば良い音が出てそれを外れるとひっくり返ったり滑ったりする楽器としてシビアで難しいもので良い楽器であればあるほどツボ感が狭い反面そのツボにはまった時に出るパワーはすごいものと思います。

その状態というのが天秤で言うと左右のバランスが取れた状態、『0』の状態です。僕たちは常に楽器に手を入れるときにはなるべく『0』にしようとしています、楽器にとってストレスのない状態がどこかを見極めて全てのことをその一点に持っていきます。その一点が楽器の中心感であり弾力感でもあると思います。

何でもそうですが厚化粧や上塗りして下にあるものを隠すのは簡単ですが、このやり方はそれらの全く逆ですっぴんにしていく作業です。

これが松本弦楽器の道具に対する見方で、それゆえにアジャスターも1つの重りでバランスを狂わす原因ですから、ない方が良いけどせめて付けるなら…ということでオリジナルの宙ぶらりんアジャスターになり、顎あてもオーバーテールピースはブロックの振動を妨げ重量も結構あるので片側の軽いタイプの物が付いていたり、弦も質量の軽い張力の低いものを張ります、弦に関しては同じ種類の弦を4本が基本です。チェロは世間一般ではA,Dはヤーガー、ラーセン、G、Cはスピロコアが主流ですが、親方の言葉を借りると「車の左右で違うサイズのタイヤを履いてまっすぐ走れって言ってるようなもんだ、そんなんでバランス出るわけ無い」と、全てが1つの方向を向いています。

ムダをどんどん減らして楽器をすっぴんにするというのはすごく怖いことで、楽器の能力がそのまま音になるので能力の無い楽器はどんなに頑張っても寂しかったりします。逆に能力のある楽器は弾くのが難しくなります、適当に弾いていられないのでしんどいと思う方も中にはいらっしゃいます。

そういう感じで毎日仕事をしていますが楽器をすっぴんにするにはまず自分が楽器に対し自分に対しすっぴんにならないといけないなとつくづく思います。

自分と向き合い、素直な気持ちで修理に携わりお客さんにも同じ気持ちで接することが大事でそういう気持ちで仕事をすれば、いい仕事ができるかな~なんて思います。

かなり長くなってしまいましたが、松本弦楽器は世の中の主流とは全然違うところにいますが、僕たちは思うことは主流とか関係なく楽器を道具として最大限の能力を出し、提供することです。

常にopen my mindで、そんな意味もあるらしいです。あの看板。

そんなこんなで僕も弟子としてopen the heartで行きたいと思います。

これからもよろしくお願い致します。

長文失礼いたしました。

 

松本弦楽器 井田直也