月別アーカイブ: 2015年10月

Fittingの話4-2

2部では二つのピンの違い、などをお話していこうと思います。

まずフェルナンブーコだけで作ってみたエンドピンと台座がこちらです。

フェルナンブーコピン

黒檀でできたものと同じ形ですがピンはフェルナンブーコの素材そのままの色ですので派手ですね、フェルナンブーコでも材質により色が赤っぽかったり茶色っぽいのもありますがピンに使用しているのは軽くて明るめのものを使用しています。

その理由は黒檀ピンとフェルナンブーコピンの違いと少し近いのですが、黒檀の材質は少し粘り気があり重くウェットな感じで金属ピンに比べると楽器の反応は格段に速いのですが感覚的に言うと少し音が潜る感じがします。

それに比べて明るい色のフェルナンブーコは粘り気が少なくカリッとした感じで黒檀ピンの様に潜る感じがありません。音の立ち上がりが黒檀のものとは比べ物にならないくらい早いです。ただ、色の暗いフェルナンブーコは材質的に黒檀に近いような感じがあり重さもあるので音色や音の立ち上がりが少し控えめです。

やはり弓に使われている材料だけあって強度、反応、倍音の成分素晴らしいです。

ですが、この差を知ると黒檀ピンすら楽器には負担があり楽器の抵抗になっていたんだという事が分かります、余計なものが増えて楽器の荷物が増えると楽器は反応が遅くなり、倍音が減ってしまいます。が、倍音や楽器の反応が増えれば増えるほど弾いているときの手ごたえや、自分の近くで聞こえる音は小さくなり自分の弾いてる音は本当に鳴ってるのか心配になるほどです、逆に言えば余計なものを増やして荷物を増やすと手ごたえや自分の近くで引いているときの感触は増えていきます。 これは傍で鳴るだけで遠くには音は飛んでいきません。

つまり、バロックの時代にピンがなかった状態から今の金属ピンができて来た流れの中でボディに余計な荷物が増えてきてどんどんチェロという楽器本来の音からは離れて来ているという事です。

これまで色んなfittingの話をしてきましたがfittingは楽器にとっては余計なもので、できれば無いほうが楽器本来の音が出ますが、じゃあ、無しで!!みたいに簡単な話でも無いので付けるなら最小の負担で最大に近いだけの結果を出せたら良いよねという事で未だに完成ではないのですが付けているものです。という事もお話してきました。

ここで紹介させてもらったアジャスターや顎当て、エンドピンを付ければ音が良くなるからぜひ付けてみて下さいね!という事ではないですというのもずっと言って来ています、いかに楽器に負担をかけず、に楽器のバランスを整えたまま出すかがfittingのポイントではないでしょうか?

ちょうど、今週末に毎年科学技術館で開催されている弦楽器フェアがありますが、そこで当工房のチェロが試奏楽器として出ています。そのチェロにはフェルナンブーコピンがついていますが、付け替えて弾けるように黒檀ピンや金属ピンも一緒に用意してありますので同じ楽器の状態で金属ピン、黒檀ピン、フェルナンブーコピンの差を実感していただけると思いますので興味のある方はぜひ試奏しに行かれてはいかがでしょうか、その際は杉藤楽弓社のブースにあるチェロを弾いてみて下さい。

そこで少しでも何か思うことがあり自分の楽器の音が本来のものなのか歪から出ているものなのか、自分の楽器らしい音って何だろうと感じてもらえることができれば幸いです。

というわけで、fittingの話はこれで終わります。これで完成ではないしまだまだ余計な部分もあると思いますが一つのパーツとしてそればかりに固執してしまうと楽器の本質から離れて行ってしまうと思います、そうすると何度も言うように「これ付けてみたら音良くなりますよ!」になってしまうので、まずは今の楽器の現状を把握して、その楽器のバランスを整えて、そこからfittingどうしようかと話をしていきたいものですね。fittingに対する見方が少しでも変わってくれたら嬉しいです。

そのためには楽器をちゃんとしたバランスに整えなければならないのですが、楽器は1本1本個性が違うのでその1本1本に合わせたセッティングにしなければならいのですが、それがまた難しくて…まだまだ修行が足りないなぁ…とめげる毎日です。ちゃんと楽器と向き合って一つ一つ大事に仕事に励むように精進します、未熟者ながらこんな大層な話を書き綴ってきましたが最後まで読んでいただきとても嬉しいです。 長いことお付き合いいただきましてありがとうございます。

ではまた何かの話をするかも知れませんし、全然関係ない事を突然書くかもしれませんがそれはその時で(^^)

よろしければお付き合いください!ではではm(__)m

Fittingの話4-1

今回のfittingはcelloのエンドピンのお話をしていこうと思います。長くなりそうですので2部制で行きたいと思います。

celloのエンドピンのシャフト(棒の部分)といえば金属のもので太さが8ミリのものか、10ミリのパイプ状のものが一般的で、金属の材質もスチールやアルミ、タングステンなどでできているものが今の主流です。

今の主流はひとまず置いて、まずエンドピンの歴史をお話していこうと思います、想像を交えつつですので事実かどうかは分かりませんが(^^;話の都合上、本体に付いている部分を台座、シャフトをピンと呼んでいくことにします。

今のモダンのチェロと違いバロックチェロには台座のみでピンがありません、バロックチェロは楽器を足で挟んで固定して弾くのでviolin、violaと同じ形状のテールピースを固定するための台座が付いているだけでした。

それから楽器をより楽に固定し演奏しやすくするために台座に直接刺すピンが出来ました。このピンは台座にテーパーになっている穴が空いていて、そこに黒檀で出来たピンを指して使うものでした。これによって足で挟んで固定していた楽器が自由になり演奏し易くなりました。ただしこのピンは長さの調整が出来ないのとピン単体で持ち運ばなければなりませんでした。ここは少し不便ですね、恐らくいろんな長さのピンがあり、自分に合う長さのピンを持っていたのかもしれません。

それから台座に穴を開けてピンを通し長さの調整が可能になる様に改良されました、この時はまだピンは黒檀で、太さも今のものよりも太いものでした。これは強度的に太くないと曲がったり楽器を支えきれないためだと思います。そしてさらに改良されピンが金属製になり、細くなり、様々なピンが作られる様になりました。

ここで一つ思う事はピンは元々無かったもので最初に出てき時の概念は楽器の一部で付属品と言う考えでは無かったのではないかと言う事。それが時代と共に別の独立したパーツとなってしまったのではないかということです。最初に出来たであろうピンは金属ではなく木材で、元々エンドピンと言うものは木材で出来ていた、楽器の一部。単純に台座が伸びたものと考えると今のエンドピンの状態は楽器との折り合いが悪そうです。金属は楽器にとっては異物ですし木材と比べるとかなり重いものです。

そこでまずピンを黒檀にしてみることから始まりました、太さは強度の関係で昔あった黒檀ピンと同じ太さで、台座は既製のものを改造して作り実際に製作してみました。

昔ながらの黒檀ピンですが、このピンと金属ピンの差が歴然で音の広がりや倍音の成分まで全然別もので、改めて金属ピンと言うのは楽器の振動を妨げていて楽器にとっては余分なものだと思いました、特に材質の金属が重くなればなるほど音の響きは無くなり反応も落ちていくことも分かりました。つまりピンは無しで弾いてくださいというのは流石に無理なので材質を軽くして反応の早い材質であれば楽器にかかる負担も少なくなり、楽器の反応も早くなって倍音も増えて来るのではないかと言う考えになりました。

ピンを留めるネジの材質一つで音が変わってしまったのにはビックリしました(^_^;)

最初に作った黒檀ピンはこんなものです。台座も改造品ではなく1から作ってネジも真の部分以外は黒檀で作っています、先端は床に刺さる部分なので金属ですが黒い部分は黒檀で台座のネジの入るところも木だと強度が出ないので真鍮でできています。黒檀ピン

こんな感じです、これから楽器の反応や強度などを考えて弓の材料にも使うフェルナンブーコで同じものを作ってみました。二つのピンの違いなどは次でお話していこうと思いますのでひとまず1部は終わります。