松脂の旬

1年を通して松脂を煮ていて思うことが、いい松脂を作るにはどんな風に煮込んだら良いかということ、今回はそんな裏側のお話です。

松脂の面白いところは料理と同じで素材が同じでも煮方一つで出来具合いが全然別のものになる所です。ですので一般に市販されている松脂の多くは一定の商品の品質を保つために油を入れています。油を入れると松脂の質が一定になる反面、油の質によって酸化し松脂がダメになることもあります。松脂の使用期間は何年ぐらいとか言っているのはその為です。

松本弦楽器製の松脂は100%松脂ですのでご安心ください、むしろ年数が経てば経つほどに熟成されて質の良いものになっていきます。

松脂を作る際に関係していると思うのが気温、湿度つまりその日の天気と松脂の酸化具合。これらの関係で最後に出来上がるものが変わってくるようです。まず松脂にはグレードと言うものがあり精製度合いによって分かれています。松脂に適していると思うのがグレード的には低いものが良いと思います、なぜかと言うとグレードによって融点と酸化具合が違うからで、グレードが低いものの方がいい松脂を作るのに適していると思うからです、日本で手に入れられる松脂のグレードより低いものが欲しくて直接中国に問い合わせたら仕入れは可能ですが最低輸入量が1コンテナからだったので諦めました。1コンテナだいたい3トンなので流石に…ねぇ…。なので今はひたすら熟成と言うか放置して商品として松脂を作るのに使えるレベルまで置いてあります、最近熟成を早める方法も発見したので来年再来年が楽しみです。

そして気温と湿度。気温はなるべく高い方が良いです、と言うか寒くなければ大丈夫、これは煮た松脂の冷める具合に絡んでいそうでなるべくゆっくり冷ました方が良い感じです。湿度もなるべく高めの方が良いような感じです。そしてそれを煮込んでいった時に松脂が溶けて泡が出てくるのですが、この泡の出具合で全て決まるように思います。良い泡が出るタイミングや条件は研究中なので毎回作り甲斐がありますね。

大体こんな条件で作るとそこそこ良いものができます。なので松脂を作るのは梅雨時から夏の湿度の高い時がベストかと思います。冬は向いていないかと言うと気温さえなんとかなれば湿度が低いのでさらっとした松脂が出来やすいのでそれはそれで使い様かと思います。

ぼくはなるべく気持ち悪い天気の日、雨が降りそうなジメジメしていて暑い日なんかに作るのが今の所良いかなと思います。

これから消費税も上がるので価格も改定しなければならないのですが、それに合わせて松脂も値段が変わります、お値段は上がりますが質はそれ以上に向上していきますのでよろしくお願い致します。

今回はそんな裏側のお話でした。

settingのお話 3

今回のsettingのお話はネックの角度に関するお話です。この図の示しているのはネックアングルと指板の高さの関係です。今回は少し複雑な話になるのでなるべく分かりやすく書くつもりですが、分かりにくかったら御免なさい。後から質問等何でも受け付けますので悪しからず。

一般的にバイオリンの場合、指板の高さプロジェクションとも言いますが、それはフルサイズの場合は27㎜でネックの仕込みの角度はネックの仕込んである表板の端で表板と指板接着面の高さが5.5㎜というものです。

表板の厚みや楽器の横板の高さなどの関係なく一律に決まった寸法になります。この図ではネックアングルはバイオリン、ビオラは横板と表板の接着面の延長戦上に上ナットの頂点が来る角度チェロの場合-8㎜~-6㎜になるという事とプロジェクションは横板の高さに比例して決まるという図になっています。この図には書き込んでありませんがプロジェクションはバイオリンの場合で横板の高さの0.9倍、チェロは0.675倍、ビオラは0.872倍になります。すると横板の厚みが30㎜の楽器のバイオリンの場合プロジェクションは27㎜になります。横板が低ければ比例してプロジェクションも低く高ければ高くなるということになります。これによって表板の指板との接着面の立ち上がりが5.5㎜というのは関係なくなり、また指板の厚みも5㎜~5.5㎜というのも関係なく楽器によって適正な寸法があるということが分かります。

逆に先に指板の厚みを決めてしまえばそれに伴ってネックアングルの角度も変わります、つまり一般的に言われている楽器の寸法が本当にその楽器にとって丁度良い寸法になっているのか、そこが問題になってきます。例えばチェロで横板の厚みが115㎜のものがあったとして図の通りの計算をすれば115㎜×0.675=77.625㎜です、が普通に言われているチェロは指板の高さは81㎜ですので81㎜でセットした場合その楽器には指板が高すぎる状態になります。こうなると表板に対する弦の張力が強すぎるので表板を上から押す力が強くバランスが取れないということになります。その場合は指板を下げればいいのですがただ3.375㎜指板を下げれば良いのか、ネックアングルの位置はこのままで良いのか、ネックを抜かないとネックアングルの位置が悪いのか指板で調整できるのか全部含めて指板の高さを適正な位置に持ってこないといけません。

もちろん最初の回でお話ししたネックの真ん中とボディの真ん中を合わせることも忘れてはいけません、つまり指板が高いといっても一概にじゃあ削って下げましょうか、低いです、じゃあ新しく厚めの指板を張って高さを上げましょうかまたはネック上げして…とはならないということです。そこだけ見て仕上げただけで満足するのは何の問題の解決にもなっていないと思います。寧ろ寸法だけで見ていると楽器にとってはマイナスにもなる可能性があるということを覚えていてもらいたいです。寸法というのはあくまで一般的な参考数値でそれが全てではないということです。

楽器屋さんでライヴ! vol.24

遅くなってしまいましたが、7月19日にバイオリン 喜多直毅さん、箏 元井美智子さん、sax Florian Walterさんによるライヴが開催されました。 

喜多さんと元井さんは工房で何度も共演されていてそこにサックス奏者のFlorianさんを加えての即興ライヴでした。

いつも、この日元井さんとFlorianさんは初対面、初めましてと挨拶を交わして2時間もしないうちにライヴ本番で打ち合わせ的なことと言えばサックスの音の大きさとお三方の立ち位置くらいで後は演奏をどんな感じで進めるか話しているくらいで軽く10分くらいセッションをした程度。

即興をする人は軽く合わせをすれば大体その人の人となりが分かるそうで後はその場のテンションだったりお互いの呼吸だったりするそうです。 本当に会話をしているのを聴いているような時間でした、サックスの音も普段聞いている音の感じとはまた違う擦過音の様なものや哀愁の漂う雰囲気でお洒落でFlorianさんの人の好さが表れている様でした。 

今回のライヴ動員数は過去最高の19人!工房がさすがに一杯で写真を撮る隙間がなかったので

ちょっと拝借したものです。普段自分が撮る写真より断然素晴らしい、カッコいいですね。

夏季休業のお知らせ

夏季休業のお知らせです。

基本的に8月中は通常通り日曜日、祝日以外の10時から18時まで営業いたします。

11日~16日の間はメールでのご対応は遅れることがあるかと思いますので、お電話が確実かと思います。

また25日前後は親方不在ですが会社は開いておりますので、前もってご連絡いただけるとスムーズかと思います。何卒よろしくお願いいたします。

楽器屋さんでライヴ!! vol.23

5月25日にバイオリン、喜多直毅さんと箏、元井美智子さんよるduoライヴが開催されました。

このお二人のライブもお馴染みです。

2部構成で1部が即興演奏、休憩をはさみ2部がアレンジ曲という構成でした。今回の元井さんの演奏された箏は150年ほど前に製作されたもので今とは若干作りが違うそうで少し楽器を眺めさせていただけたので観察してみたら本体の形が普通のアーチ状とは違うカーブをしていてまるで日本刀のカーブのようでその頂点に合わせて隆起もできていて絃の掛かり方も三次元的に掛けられていました。びっくりしました、最近このブログ内でsettingのお話というものを書き出していてその内容そのままの様な作りをしていたからです。

音もこれまでの箏の音の出方、立ち上がりとはやはり違う感じで音の立体感や中心感みたいなものを感じる音でした。

残念ながら今ではこの作り方で箏を作ることができる職人さんがいないそうで絃の張り方もゆるく張らないといけないそうですが、この形とその張力の弱さが長年かたちを保つ秘訣なのかもしれません。

今書いているsettingのお話の事を思いつつやっぱり弦楽器は構造的にこうだよねと納得した演奏会でした。

settingのお話 2

今回は楽器の本体に弦が掛かった際のボディの力の掛かり方についてです。

上の図は弦が掛かってネックが起き上がろうとする力とテールピース側からも縦方向に引っ張られる力で表板は縦方向に縮まろうとするので表板の頂点は上向きに持ち上がろうとしています、裏板はネックが上向きに起き上がるのに引っ張られるのと表板の縮む向きに合わせて下ブロックで固定されているので表板が縮まる力になるなら裏板は伸びる力になり、縦方向には伸びようとするので裏板の頂点は下向きに力がかかります。 下の図は表板に縦方向で力がかかった場合のエッジに掛かる力の向きを表しています。

実際には表板には駒があるために矢印の向きと逆向きの力、表板を押すによって下方向にも力がかかるので縮む力と反対の伸びる力も加わりますし、駒が表板を押すと中にある魂柱が裏板を裏板側で矢印方向と逆に押すので裏板も頂点から上向きにも力が加わりネックを持ち上げる力と逆のネックを下げようとする力が加わります。

つまり、うまくバランスがとれた状態にあるとこの矢印がすべて相殺されることになります。ここでいうバランスの取れている状態とは楽器の強度と弦の張力の力のバランスです。楽器がしっかりした強度とアーチをしていて弦の張力がその楽器の強度の許容範囲内であれば矢印のバランスはとれますが、例えば弦の張力が楽器にとって強すぎる場合図に書いてある矢印のバランスが崩れて楽器本体を壊す方向に力が働くと表板に割れが入ったり指板が上がったり、下がったりする現象が起こります、つまり楽器と弦のバランスが取れていて、settingのお話1で書かれているように上下と左右のバランスが取れていれば楽器は壊れないという事です。

元々バイオリン属はシェル構造で壊れにくい構造であるのだからバイオリン属は長持ちして現在まで300年も持つ楽器になっているのです。さらに材料の木材は伐採後500年後に1番強度が出るともいわれているので、製作されて10年で壊れたりバスバー側が落ちたりという状態になる楽器などは基本的に構造上問題があるか強度がないペラペラの楽器ということになります。弦の張力がその楽器にとって強すぎたり左右のバランスが狂っていたりしても同様に楽器を壊す働きになるので一概には言えませんが。

バランスが整ってきて運動効率が良くなると楽器も響くようになります、鳴り方としては自分の傍では静かで音が遠くに飛んでいく、所謂「遠鳴り」になります。その逆にバランスが狂って運動効率が悪くなると自分の傍でばっかり鳴って遠くに音が届かない「傍鳴り」状態になります。

弦の張力などは各弦メーカーが張力表を出しているので、どういう状態を前提にして割り出しているかはメーカーごとに違うと思いますが気になる方は参考に見てみてもいいかもしれません。

そして忘れてはいけないのが弦メーカーは一応自分のブランドの同じ種類の弦を4本張ってバランスが取れるように設計しているという事です。←これ1番大事です。

ゴールデンウィーク中のお知らせ

ゴールデンウィーク中のお休みのお知らせです。

4月28日(日)、4月29日(月)、5月3日(金)~5月6日(月)はお休みさせていただきます。

4月30日(火)、5月1日(水)、5月2日(木)は通常通り営業いたします。

なおメールのお問い合わせやネットショッピングでの対応はゴールデンウィーク明けになるかもしれませんのでご了承ください。

よろしくお願いいたします。

settingのお話 1

楽器に対する力のイメージについて

上の図は楽器に対する弦の掛かり方とそれに付随する力のバランスについて書いてあります。

平面図で書いてありますが、実際は立体なので円錐形をイメージしていただくと分かりやすいです。上の図の小さい菱形の部分は横から見た弦の掛かる部分(上ナットから駒を通ってテールピースまでの弦の掛かり方。楽器の中心を通って裏板側にも力のバランスがかかっていることを表しています。)大きい菱形の部分は下の図の楽器を正面から見た際の糸幅の収束してまとまっていく点を表しています。

この図が表しているものはバイオリン属は力のバランスが1点でまとまる(弦の中心感と楽器の中心感が1点でまとまる)様にできていること、平面図では分かりにくいかもしれませんが、この左右の円錐の垂線は楽器の中心で交わることを表しています。

このまとまる点(左右の線がまとまっている点)がずれて曲がって掛かっていたり、捩れてかかっていたりたりすると楽器と弦の中心感がずれてバランスが崩れていくという風になります。

どちらもまっすぐかかっていれば1番バランスが取れているということになります、じゃあ曲がっていたり捩れたままだとどうなるかと言うと、表板の魂柱側が下がったり、バスバー側が下がったり楽器自体がねじれてきたり、表板が割れたり…原因はこれだけで無く次回からお話しすることとも全部絡みますが楽器自身が弦の張力で自分を壊す方向に力を掛けていくという風になります。

バイオリン属はシェル構造なのでバランスが取れてさえいればプラスマイナス0になるように設計されているはずです。つまり壊れない設計になっています。もちろん元々の楽器の設計や強度など個体差ありますが基本的にはそういう風になっていると思ってください。なので、なぜか自分の楽器のバスバーが下がってくるのでオーバーホールでバスバーを交換してもまた下がってくる状況や、g線だけ鳴らないとかe線だけいつもひっくりかえるから弦を変えてみた、でも直らない。など原因はバスバーや弦の問題ではなくネックの問題に付随するバランスの問題が占めている割合の方が大きいということを知ってもらいたいです。

むしろちゃんとセットすれば表板のバスバー側が落ちていたのがバスバー交換しなくても使っているうちに元に戻ってくることもあります、これはオリジナルバスバーでの話ですが。

楽器のバランス次第で壊す力にも直す力にもなる。 魂柱をコンコン叩いて音が変わるのは当たり前です、駒も削ったり立て替えれば音が変わるなんてバランスが変わるのだから当たり前です。どこをどう変えたらその楽器にとってバランスが良くなるか考えてアプローチすることが大事だと思います。とりあえず弦変えるとか駒変えるというのは何の調整でも修理でも何でもないということを分かっていただきたいです。と、喧嘩を吹っかけるのはここら辺にして(-_-;) 

今回は楽器の中心感と弦の中心感をそろえること、それらは1つの点で交わることについでした。

次回は楽器の表板裏板に掛かる力についてです。

settingのお話 序章

何回か前のblogの中で松本弦楽器「3枚のコピー用紙」なるものについて少しだけお話をしましたが、今回はこの話を書いていこうと思います。

自分の頭の整理と松本弦楽器ってこんな風に楽器を見ているんですよ、という説明のために書いていきますので分かりにくかったり、ぐちゃぐちゃな文章になるかもしれませんがなるべく分かりやすく書こうと思いますのでよろしくお願いいたします。

もう6年前になりますが「初心に還って」というものとも絡んでくるので自分でも1度読み返してみたのですが、まぁ~分かりにくい(;^_^A 分かったのは看板のopenの由来くらいでしょうか。

あれから6年…分かりやすく、読みやすいものが書けるか自分にプレッシャーを掛けながら少しづつ書いていきたいと思います。これから書いていく順番ですが優劣はなく1番最初に書いたから1番大事とかではありません。どれも大事です。

では次回から始まります。