Fittingの話4-2

2部では二つのピンの違い、などをお話していこうと思います。

まずフェルナンブーコだけで作ってみたエンドピンと台座がこちらです。

フェルナンブーコピン

黒檀でできたものと同じ形ですがピンはフェルナンブーコの素材そのままの色ですので派手ですね、フェルナンブーコでも材質により色が赤っぽかったり茶色っぽいのもありますがピンに使用しているのは軽くて明るめのものを使用しています。

その理由は黒檀ピンとフェルナンブーコピンの違いと少し近いのですが、黒檀の材質は少し粘り気があり重くウェットな感じで金属ピンに比べると楽器の反応は格段に速いのですが感覚的に言うと少し音が潜る感じがします。

それに比べて明るい色のフェルナンブーコは粘り気が少なくカリッとした感じで黒檀ピンの様に潜る感じがありません。音の立ち上がりが黒檀のものとは比べ物にならないくらい早いです。ただ、色の暗いフェルナンブーコは材質的に黒檀に近いような感じがあり重さもあるので音色や音の立ち上がりが少し控えめです。

やはり弓に使われている材料だけあって強度、反応、倍音の成分素晴らしいです。

ですが、この差を知ると黒檀ピンすら楽器には負担があり楽器の抵抗になっていたんだという事が分かります、余計なものが増えて楽器の荷物が増えると楽器は反応が遅くなり、倍音が減ってしまいます。が、倍音や楽器の反応が増えれば増えるほど弾いているときの手ごたえや、自分の近くで聞こえる音は小さくなり自分の弾いてる音は本当に鳴ってるのか心配になるほどです、逆に言えば余計なものを増やして荷物を増やすと手ごたえや自分の近くで引いているときの感触は増えていきます。 これは傍で鳴るだけで遠くには音は飛んでいきません。

つまり、バロックの時代にピンがなかった状態から今の金属ピンができて来た流れの中でボディに余計な荷物が増えてきてどんどんチェロという楽器本来の音からは離れて来ているという事です。

これまで色んなfittingの話をしてきましたがfittingは楽器にとっては余計なもので、できれば無いほうが楽器本来の音が出ますが、じゃあ、無しで!!みたいに簡単な話でも無いので付けるなら最小の負担で最大に近いだけの結果を出せたら良いよねという事で未だに完成ではないのですが付けているものです。という事もお話してきました。

ここで紹介させてもらったアジャスターや顎当て、エンドピンを付ければ音が良くなるからぜひ付けてみて下さいね!という事ではないですというのもずっと言って来ています、いかに楽器に負担をかけず、に楽器のバランスを整えたまま出すかがfittingのポイントではないでしょうか?

ちょうど、今週末に毎年科学技術館で開催されている弦楽器フェアがありますが、そこで当工房のチェロが試奏楽器として出ています。そのチェロにはフェルナンブーコピンがついていますが、付け替えて弾けるように黒檀ピンや金属ピンも一緒に用意してありますので同じ楽器の状態で金属ピン、黒檀ピン、フェルナンブーコピンの差を実感していただけると思いますので興味のある方はぜひ試奏しに行かれてはいかがでしょうか、その際は杉藤楽弓社のブースにあるチェロを弾いてみて下さい。

そこで少しでも何か思うことがあり自分の楽器の音が本来のものなのか歪から出ているものなのか、自分の楽器らしい音って何だろうと感じてもらえることができれば幸いです。

というわけで、fittingの話はこれで終わります。これで完成ではないしまだまだ余計な部分もあると思いますが一つのパーツとしてそればかりに固執してしまうと楽器の本質から離れて行ってしまうと思います、そうすると何度も言うように「これ付けてみたら音良くなりますよ!」になってしまうので、まずは今の楽器の現状を把握して、その楽器のバランスを整えて、そこからfittingどうしようかと話をしていきたいものですね。fittingに対する見方が少しでも変わってくれたら嬉しいです。

そのためには楽器をちゃんとしたバランスに整えなければならないのですが、楽器は1本1本個性が違うのでその1本1本に合わせたセッティングにしなければならいのですが、それがまた難しくて…まだまだ修行が足りないなぁ…とめげる毎日です。ちゃんと楽器と向き合って一つ一つ大事に仕事に励むように精進します、未熟者ながらこんな大層な話を書き綴ってきましたが最後まで読んでいただきとても嬉しいです。 長いことお付き合いいただきましてありがとうございます。

ではまた何かの話をするかも知れませんし、全然関係ない事を突然書くかもしれませんがそれはその時で(^^)

よろしければお付き合いください!ではではm(__)m

Fittingの話4-1

今回のfittingはcelloのエンドピンのお話をしていこうと思います。長くなりそうですので2部制で行きたいと思います。

celloのエンドピンのシャフト(棒の部分)といえば金属のもので太さが8ミリのものか、10ミリのパイプ状のものが一般的で、金属の材質もスチールやアルミ、タングステンなどでできているものが今の主流です。

今の主流はひとまず置いて、まずエンドピンの歴史をお話していこうと思います、想像を交えつつですので事実かどうかは分かりませんが(^^;話の都合上、本体に付いている部分を台座、シャフトをピンと呼んでいくことにします。

今のモダンのチェロと違いバロックチェロには台座のみでピンがありません、バロックチェロは楽器を足で挟んで固定して弾くのでviolin、violaと同じ形状のテールピースを固定するための台座が付いているだけでした。

それから楽器をより楽に固定し演奏しやすくするために台座に直接刺すピンが出来ました。このピンは台座にテーパーになっている穴が空いていて、そこに黒檀で出来たピンを指して使うものでした。これによって足で挟んで固定していた楽器が自由になり演奏し易くなりました。ただしこのピンは長さの調整が出来ないのとピン単体で持ち運ばなければなりませんでした。ここは少し不便ですね、恐らくいろんな長さのピンがあり、自分に合う長さのピンを持っていたのかもしれません。

それから台座に穴を開けてピンを通し長さの調整が可能になる様に改良されました、この時はまだピンは黒檀で、太さも今のものよりも太いものでした。これは強度的に太くないと曲がったり楽器を支えきれないためだと思います。そしてさらに改良されピンが金属製になり、細くなり、様々なピンが作られる様になりました。

ここで一つ思う事はピンは元々無かったもので最初に出てき時の概念は楽器の一部で付属品と言う考えでは無かったのではないかと言う事。それが時代と共に別の独立したパーツとなってしまったのではないかということです。最初に出来たであろうピンは金属ではなく木材で、元々エンドピンと言うものは木材で出来ていた、楽器の一部。単純に台座が伸びたものと考えると今のエンドピンの状態は楽器との折り合いが悪そうです。金属は楽器にとっては異物ですし木材と比べるとかなり重いものです。

そこでまずピンを黒檀にしてみることから始まりました、太さは強度の関係で昔あった黒檀ピンと同じ太さで、台座は既製のものを改造して作り実際に製作してみました。

昔ながらの黒檀ピンですが、このピンと金属ピンの差が歴然で音の広がりや倍音の成分まで全然別もので、改めて金属ピンと言うのは楽器の振動を妨げていて楽器にとっては余分なものだと思いました、特に材質の金属が重くなればなるほど音の響きは無くなり反応も落ちていくことも分かりました。つまりピンは無しで弾いてくださいというのは流石に無理なので材質を軽くして反応の早い材質であれば楽器にかかる負担も少なくなり、楽器の反応も早くなって倍音も増えて来るのではないかと言う考えになりました。

ピンを留めるネジの材質一つで音が変わってしまったのにはビックリしました(^_^;)

最初に作った黒檀ピンはこんなものです。台座も改造品ではなく1から作ってネジも真の部分以外は黒檀で作っています、先端は床に刺さる部分なので金属ですが黒い部分は黒檀で台座のネジの入るところも木だと強度が出ないので真鍮でできています。黒檀ピン

こんな感じです、これから楽器の反応や強度などを考えて弓の材料にも使うフェルナンブーコで同じものを作ってみました。二つのピンの違いなどは次でお話していこうと思いますのでひとまず1部は終わります。

 

Fittingの話3

前回アジャスターのお話をしてから早半年、親方にもお前最近更新さぼってんな~と言われ、お客さんにも最近更新止まってますね~と言われ、あーやんなきゃなーとか思って時間だけが過ぎていった結果です。もし、こんな記事でも楽しみにしてくださっている方がいて待っていてくださったのであれば本当に申し訳ありませんでしたm(__)mやっと書きました!!ホームページはまだ閉鎖してません生きていますよ!

というわけで今回は顎当てのお話です。

今は普通に目にする顎当てですが昔のバロック楽器の時代には顎当てはありませんでした。元々のバイオリン属は顎と肩でがっちり挟んで弾くものではなくて腕の付け根あたりに軽く押しつけて引っ掛けるようにして弾いていました。

それから徐々に元々ハイポジションまで使わなかったバイオリン属でハイポジションまで使うことになり速いパッセージ等も弾くことになり弾きやすさを求めて楽器を固定するのに便利なように顎当てや肩当が誕生したのではないかと思います。少なくとも、パガニーニの生きていた時代には顎当てを付けるのは主流ではなかったと思います。

パガニーニは写真は残っていませんが絵が数点ありどれも顎当ても肩当ても付けていません。興味のある方はパガニーニで画像検索してみてください。

そうして、顎を固定したほうが弾くの楽だし、安定もするじゃないか!しかも汗をかいたりしても楽器に汗がつきニスをダメにすることもない、ニスも服に付かない、と多分このような理由から普及していった顎当ては片側に付けるタイプが始まりで今ではオーバーテールピース型というテールピースを跨ぐように固定するタイプのものが主流になりました。このオーバーテールピース型は楽器に対し下ブロックのある位置から左右で固定する様になっていて片側タイプのものより左右均等に圧が加わるのでバランスが良い、またテールピースに顎が触れにくいためにテールピースに触れることによって弦の振動を止めてしまうこともないと言われています。

確かに片側だけに重さがあるより左右にあるほうがバランスは良いしテールピースも触れないほうが振動を止めないので良いと思います。…が、実際に使用している方の顎当てを見るとテールピースに顎が思いっきり当たってますし、振動はブロックの左右から固定しているタイプのほうが止まっています。何より重いです。あと、無駄に大きいと思います。弾いているときに顎の乗る位置というのはそんなに大きな面積ではないのに何故あんなに大きいのか不思議です。特にビオラ用の顎当てに関しては楽器は大きいですが弾いている人間はバイオリン対ビオラほど人間が大きい訳でもないし、ビオラを引く人が特別顎が大きいわけでもないのでビオラ用としてわざわざ大きなものを付ける必要はないと思います。(もちろん体格差や骨格の違いなどは関係してくると思いますが)

文句ばかり言っていますが、オーバーテールピース型の営業妨害したいわけではなく片側タイプのものでも同じことです。そんなに大きさ必要ですか?もっと楽に楽器を構えてみませんか?というわけでこちらです。IMG_0897 rest

 

これは楽器に付随するパーツ(顎当て、肩当て、エンドピンなど)の無駄を減らしてくると楽器そのものの本質が出てくる。じゃあ無駄な部分はなんだ?という所から始まり顎当てを見ていたら触れている部分というのは実はそんなに無くて外側の部分は殆ど触れてない、じゃあそこはいらない。

金具も軽いので良いや、普通2本だけど1本でも押さえられるんじゃないか?じゃあ1本にしてもその位置は真ん中に近いほうがいいのか外側なのか…なんてことをやっていたらこうなりました。

顎の乗っている部分は人により違いますが大体の方が真ん中テールピースの脇あたり、それより外側にはあまり触れていません。バイオリン、ビオラを弾いている方がいれば実際にご自身の楽器を見てもらえれば分かりますが、汗などが染みて変色していれば尚わかりやすいです。

形は人それぞれ顎の高さや形も違うのでこの形だけではありませんが、1本脚の効力はなかなかびっくりしました。穴の位置は顎当ての中心より少し外寄りが良かったです。これはチェロに修理用のクランプを挟んで位置をずらしながら実験していたのですが、テールピースに近いところはブロックがあるので振動を止めてしまうのでよくないだろうと思い段々外側にずらしていったら外過ぎるとまた真ん中に近いところで止めていた時と似た感じがしてきてとてもびっくりしました。おそらく力学的にはちゃんと理由があるとは思いますが、そこまでしてません(;´・ω・)

この形にするとまず楽器をがつっと固定しにくくなります、逆に楽器が肩と顎の間で割と自由に動かせるようになります。これを悪いとするか、良いとするかは個人の自由です。固定したい人は窪みの深い形の顎当てで肩にあった肩当てをすれば良いと思いますが、逆に自由に動かしたかった人向けのものというのはあまりありませんでした、新しく出てくる商品も楽器を固定する方向のものがほとんどですし。そして何より見た目の小ささ通り軽い、楽器本体にかかる負担は大分減りました。金具の足もチタン製で軽量です、こんな話は前回のアジャスターの話でもしていたかもしれません。

脚を1本にすると物理的な話で質量は当然軽くなり、また押さえる個所も1か所で振動を止めるポイントも減ります、すると楽器にに対しての無駄な部分が減り楽器本来のパワーが出てくるということです。

つまり、常に引き算をしているということです。普通アジャスターや顎当ての売り文句としては「これを付ければ楽器が良い音になりますよ~」だと思いますが、ここで言いたいのは「無駄を無くしてくると楽器の本来の音が鳴ってきますよ~」です。全然真逆のことをやっているわけですね。人で言えば化粧をどんどんするのか、どんどん化粧を落としてすっぴんになるのかといったところでしょうか?

 

 

…あれ?いつも同じことしか話していませんね(;^ω^)

 

 

 

普通の顎当てを2本脚から1本脚にするだけでも大分変るので顎をフリーにするのは少し抵抗ある人にも優しいtune-upです。

顎当ての話でした。

次回はエンドピンの話です。エンドピンと言ってもチェロの話ですが、これまた見慣れないものが出てくると思いますのでお楽しみに(*‘∀‘)

 

 

Fittingの話2

アジャスターのお話をしていきたいと思います。

普段皆さんが目にするアジャスターはHillタイプやwittnerのL型のものなどありますがどれもテールピースに直接付いているものがほとんどです。

松本弦楽器で扱っているものは自作しているもので市販はされていません、まずは実物を見てください。

ajasuter1ajasuter3

これは1番線の駒とテールピースの間に引っかかるように付けているもので重さは1グラム位です。ただぶら下がっていて簡単に取り外せるものです。市販のL型の物やHillタイプのものは大体3.5g~5g位です。

このタイプのアジャスターはテールピース自体の重さを変えることがなくテールピースをフリーにできます、またHillタイプに見られる様に弦のかかる高さを変えてしまいE線の張力が増えてしまうこともありません。

このアジャスターを付ける最大の理由はそこにあって市販のアジャスターの何がいけないかというと、テールピースから出てくる弦のかかる角度を変えてしまいテールピースがねじれてしまう、テールピースの枕のカーブが崩れてE線だけ飛び出してしまう。それに加えてテールピースの片側に重さもかかるのでよりアンバランスになってしまいます。これらがクリアできていればL型の物でもHillタイプでもある程度のバランスは整えられるので良いのですが、重さの問題だけは無理です。楽器にとっては余計な重りが片側に乗っている状態ですので。

このアジャスターですら、ある時とない時では出る倍音に差が出るので出来ればアジャスターは付けない方が良いのですが付けるならこの程度が限度だと考えています。アジャスターが無くても意外とE線の調弦もできます、要は慣れですね。

よく、このアジャスターを付ければ音が変わるとか、響きが変わるとか耳にされると思いますが、重さやテールピースの角度が変わっていればバランスが変わるので音が変わるのは当たり前ですね。何故変わるのか、どんな要因でどう変化するのか分かったうえで変えるなら意味があると思いますが、とりあえず変えてみるのはあまりお勧めしません、もし交換してみようと考えている方がいたら今の状態をよく観察してみて交換したらどこがどう変化するのか調べた方が良いと思います。材料がチタンだから良いとかニッケルだからダメとかそう言った上辺の話ではなくてもっと根本の基本的な事だということを知ってほしいです。

当店で販売している楽器には初期オプションでこのアジャスターが付いていますがこのアジャスターを付ければ音が良い!!と言うことではなくて、付けないに越したことはないけれど、付けるならこれが今の所1番楽器に影響が少ないので付けているという感じです。これ以上に楽器に影響がなくて音のロスも少ない物があればもっと良いと思って色々試していますがなかなか良い感じにできません(^_^;)

ペグボックス内にアジャスターを仕込めることが出来れば楽器に与える影響が減るのでもっとアジャスター無しの音に近づくと思うのですが結局アジャスター無しが音も良いし、じゃあアジャスター無しで調弦することに慣れてしまうのが1番良いんじゃないか…とか、元も子もなくなってしまいますね。でもアジャスターはそんな物だと思います。自分でやってて言うのもどうかと思いますが、そこに拘って色々やってみてもあまり意味は無いと思います。でも‥やりますけどね(;一_一)だって、もっと良くなるかもしれないから‥

と、これが松本弦楽器なりのアジャスターへの考えです。これは以前のブログの記事の中の初心に還っての基本を踏まえた上でのことで楽器の状態によってはアジャスターを付けていた方が良い場合もあると思いますので全部が皆こうではないし、アクセサリー感覚で付ける人もいますので、それはそれで良いと思います。

以上がアジャスターのお話でした。次回はあご当てのお話をしようと思います。恐らくあまり見慣れないあご当てが登場しますのでお楽しみに!

ではでは次回m(__)m